【展覧会】「PROJECT dnF」第5回 蓬󠄀田真「display」、第6回 小林文香「静かな音をみる」

注目

福沢一郎記念美術財団では、1996年から毎年、福沢一郎とゆかりの深い多摩美術大学油画専攻卒業生と女子美術大学大学院洋画専攻修了生の成績優秀者に、「福沢一郎賞」をお贈りしています。
この賞が20回めを迎えた2015年、当館では新たな試みとして、「PROJECT dnF ー「福沢一郎賞」受賞作家展ー」をはじめました。
これは、「福沢一郎賞」の歴代受賞者の方々に、記念館のギャラリーを個展会場としてご提供し、情報発信拠点のひとつとして当館を活用いただくことで、活動を応援するものです。

福沢一郎は昭和初期から前衛絵画の旗手として活躍し、さまざまな表現や手法に挑戦して、新たな絵画の可能性を追求してきました。またつねに諧謔の精神をもって時代、社会、そして人間をみつめ、その鋭い視線は初期から晩年にいたるまで一貫して作品のなかにあらわれています。
こうした「新たな絵画表現の追究」「時代・社会・人間への視線」は、現代の美術においても大きな課題といえます。こうした課題に真摯に取り組む作家たちに受け継がれてゆく福沢一郎の精神を、DNA(遺伝子)になぞらえて、当館の新たな試みを「PROJECT dnF」と名付けました。

今回は、蓬󠄀田真(多摩美術大学卒業、1996年受賞)と、小林文香(女子美術大学大学院修了、2012年受賞)のふたりが展覧会をおこないます。
ふたりは福沢一郎のアトリエで、どのような世界をつくりあげるのでしょうか。

なお、アトリエ奥の部屋にて、福沢一郎の作品・資料もご覧いただけます。


第5回
蓬󠄀田真「display」


《クラリネット》  2017年 水彩・紙

楽器や果物などの身近なモティーフと、さまざまな柄の布や紙を組み合わせた精緻な静物画を一貫して制作している作家が、受賞作品から近作までの選りすぐりを展示します。
また、近年作家が取り組んでいる「カルトナージュ」(ラッピングペーパーで装飾された小箱)も併せてご紹介します。

10月8日(日)-21日(土) 12:00 – 17:00  観覧無料
木曜定休
レセプション 10月9日(月・祝) 16:00 – 17:00

☆ワークショップ「紙の小箱をつくる」 

さまざまなデザインが施された紙を貼って箱を装飾する「カルトナージュ」の体験ワークショップをおこないます。展示作家の蓬󠄀田真が講師をつとめます。
日時:10月14日(土) 14:00-16:00
費用:無料
人数:先着15名様
応募:メールにて受付けます。
※10/13更新:定員になりました。お申込みありがとうございました。


《イエローテーブル》  1996年 油彩・キャンバス 

 


第6回
小林文香「静かな音をみる」

無数の点を版木に穿ち、刷る。点の集合体は淡く輝く光となり、ざわざわとうごめく生命や、流動する宇宙を感じさせる。そんな制作をおこなう作家が、当館で新たな展示の可能性をさぐります。

10月27日(金)- 11月8日(水) 12:00 – 17:00  観覧無料
木曜定休
ギャラリートーク、レセプション 10月28日(土) 15:00 – 17:00


小林文香 《やさしさの選択》 2016年 木版・和紙

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【展覧会】「発掘!福沢一郎 120年めの『再発見』」会場風景

2018年春の展覧会 「発掘!福沢一郎 120年めの『再発見』」 の会場風景をご紹介します。

今回の展覧会は、タイトルの示すとおり、知られざる福沢一郎の魅力を「再発見」しようという試みでした。つまり、今まであまり美術館やギャラリーなどで紹介されてこなかった福沢一郎の制作を前面に出して、その面白さ、豊かさをご紹介することを目的としました。

記念館内東側の大きな壁を飾るのは、主に晩年に描かれた、花と壺の絵です。しかも今回はあえて額に入れず、福沢のアトリエという雰囲気も活かしながら、作品を身近に楽しんでいただこうと考えました。

大きくて生命力の強そうな花は、福沢の描く人間像に似た存在感を放ちます。また壺の絵は、おそらくは古代ギリシャの壺をヒントにしていると思われますが、モティーフはエジプト壁画、イランの建築レリーフ、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画、そして卑弥呼など、じつに多彩です。彼がその都度想像をふくらませ、独自の世界をつくりあげようとしていたことがわかります。

 

南側の壁(上画像左側)には「旅する福沢一郎」と題して、時空を超えた画家の「旅」をお楽しみいただける作品を並べてみました。ブルターニュの海辺やスペインの闘牛場、そしてハワイなど、実際に訪れた場所の風景や人々の印象を描いたものから、ダンテ『神曲・地獄篇』や『ドン・キホーテ』など物語の世界へも、彼は知的な旅を試み、その成果としてユニークな作品を描いています。
また、西側の壁(上画像右側)には、山梨県立美術館所蔵の大作《失楽園》のための習作を展示しました。作品じたいも、またそのために描かれた習作も画家本人はとても気に入っており、「制作資料展」と称して習作による個展を行ったほどです(1980年、ギャラリージェイコ)。力強く闊達に悪魔の肉体が描かれるかと思えば、ほどよく力の抜けた線で動物たちが表現されたりと、習作といえどもたいへんユニークなものばかりです。

 

北側のコーナーには、ちょっと不思議な作品をふたつ展示しました(上画像参照)。左側は、制作年のわからない《農耕》というタイトルの作品です。使われている絵具の色や、荒涼とした大地に人間を配する作風から、1946年頃の作品ではないかと推測されます。観覧者の方々からは、これはどこの風景? 何を作っているの? ぜんぜん作物が育たなさそう!など、いろいろな疑問やご意見をいただきました。
右側の作品は、マックス・エルンストのコラージュに影響を受けて制作されたと思われる、1930年作の《静物》です。人の手が大きく描かれている「静物」というのもなかなか謎めいていますし、画面の端に塗り残しが多いのも気になります。これは描きかけ? それともこういう絵にしたかったの? それはなぜ? など、こちらもさまざまな疑問が浮かんできます。こうした謎について、あれこれ思いをめぐらすのも、作品を楽しむひとつの方法ですね。

 

奥の小部屋には、「旅する福沢一郎」の特設コーナーを作りました。テーマは東北・北海道です。
1950年から51年にかけて、福沢はまず北海道、そして次に東北を旅します。浜辺に打ち上げられたクジラやかまくらなど、見知らぬ土地で得たモティーフは、終戦直後やや混沌とした状況にあった彼の制作に、わずかながら転機をもたらすものであったようです。
《山寺新緑》は、岩壁に萌えたつ色鮮やかな若葉が、画家に与えた活力を感じさせる作品です。

 

この部屋の展示ケースには、1951年に秋田を旅していた福沢のもとに届いた手紙をふたつ展示しました。これらは、服部・島田バレエ団の創立者のひとり島田廣の筆によるもので、バレエ作品「さまよえる肖像」の舞台美術についての相談・要望と、その舞台装飾原画が到着したお礼が、それぞれ記されています。秋田の旅館で彼が新作バレエ(しかも相当観念的でマニアックな!)の舞台美術についての構想をしていたことがわかる、とても面白い資料です。

 

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2018年は福沢一郎の生誕120年。秋から来年春にかけて、福沢一郎の展覧会が続きます。それらの中でも、きっといろいろな「再発見」があることと思いますが、当館による福沢一郎の発掘!は、まだまだ続きます。どうぞお楽しみに。
展覧会詳細は、→こちらから。